
夕暮れ時、ひとりの男が浜辺にやってきました。
彼の名は、マーシー。
彼は、いつものように道具の入った鞄を砂浜に置くと
波の音に耳を澄ませながら空に向かって深呼吸をしました。
「今日も風が強いな...」
去年から吹き続けている海からの風は
今年になってもなってもやむ事はなく
夏が終わり、秋が訪れようとする頃になっても
吹きやまないのでした。

ひと息つくと、彼はランタンを作り始めました。
「昨日の続きからだ。」
いつからか灯りに魅了されるようになった彼は、
気まぐれに浜辺へ来てはランタンを作っていたのでした。
そして日が落ち、いちばん星が出る頃になると
砂浜に立てた流木に、お気に入りのお手製のランタンをかけ灯りをともすのでした。
風に揺れるランタンから漏れる灯りで、あたりはキラキラと輝き始めました。
「今日も魔法の時間の始まりだ...」
あたたかい灯りに包まれながら風を感じるこの時間は、彼にとってとてもかけがえのないものでした。

次の日は雨でした。
相変わらず風は強く、しだいに嵐へと変わりました。
その次の日も雨。
3日目、午前中まで降り続けた雨はようやくお昼にはやみ、
午後になると真夏に逆戻りしたかのような強い陽射しが降りそそぎました。
その日の夕暮れ時、
彼は久々に浜辺へやってきました。
雨上がりの夕空は、見渡すかぎり濃いピンク色に染まり、海の色さえもピンク色に変えてしまいました。
「いちばん星だ。」
刻一刻と変わる夕空の美しさにすっかり見とれてしまい、気がつくと辺りはすでにうす暗くなっていました。

「ランタン作りの続きは、また明日にしよう。」
そう思い、いつものようにお気に入りのランタンに灯りを灯したとき、ふと気づきました。
「風がやんだ…」
吹き続いていた風はピタリとやみ
ざわついていた波も砂浜も、不思議な静寂に包まれました。
「まるで時が止まったみたいだ…」
彼はいつもと違う空気を感じながら、浜辺に寝転びました。
ランタンの灯りを眺めながら、ぼんやりしていると
ランタンとは別の、どこか優しげなキラキラとした灯りが視界の端に飛び込んできました。

「こういう日には、不思議なことが起こるものだ…」
そう思いながら、彼はキラキラとした灯りに導かれるように近づいていきました。
