隣の部屋からランプの台座を借りてくると、そこに自分で作ったひょうたんを乗せてみました。


「わぁ、これはすごい。」

とてもとても弱い灯りでしたが、

初めて自分で作ったひょうたんからもれる灯りは、

何とも言葉では言い表せないほどの感動でした。


すると、いままでずっとおとなしく座っていた猫がつとぜん動き出しました。


彼が作ったひょうたんのランプに近寄ると、

クンクンと何やら確かめ始めたのです。


猫は、ひとしきり確認が終わると、ランプの前に行儀よく座り大きく目を見開きました。

次の瞬間、みるみるうちにランプは輝きを増し、

なんとも言えない、優しく温かいキラキラとした灯りを部屋中に放ちはじめました。


「すごいっ。まるでランプに命が宿ったみたいだ。」

「仕上げの魔法をかけてくれたのかい?」
「ありがとう。」

薄暗かった部屋には、新たな光が隅々まで広がり、
止まっていた時が流れ出したかのようでした。


そして彼は気が付きました。


「昨夜のランプの輝きも、君の仕業だったんだね。」

「お邪魔したね。また、今夜も来ていいかな?」


挨拶をして小屋を出る時、

猫はなんだか嬉しそうな顔をしていた気がしました。


彼も新しい相棒ができたようで、なんだか嬉しく思いました。

外に出てみると、またしても辺りは明るくなりはじめていました。

東の空からは、今にも日が昇りそうです。


「またいつもの風が吹き始めたな。」


振り返ると、小屋は跡形もなく消えていました。

彼はいつもの風を感じながら、浜辺をあとにしました。

小屋での出来事は、彼にとって特別でとても大切な物のように感じました。

その日は午後から雨になり、

夕暮れ時になってもやむ気配はありませんでした。

もちろん風も吹き続けていました。


「雨か…」


少しためらいながらも、彼は浜辺へと向かいました。


猫との約束を破るわけにはいかなかったのです。

途中、雨風は強まり、傘はまったく役に立たなくなりました。

傘をたたみ、握りしめると、浜辺まで走ることにしました。


やっとの思いで浜辺に着き、辺りを見回しましたが、何も見つかりません。

強い雨で視界は悪く、辺りは暗闇に包まれていました。


「風がやまない…」

しばらく立ち尽くしていましたが、

風がやむ気配はありませんでした。


「今日は、小屋はあらわれないのかもしれないな。」


猫との約束を思い出し、とても残念な気持ちになりました。


「仕方がない。今日はもうあきらめよう。」


そう思い浜辺に背を向けたとき、後ろからミャーンと声が聞こえた気がしました。

彼は振り返り目を凝らしましが、猫はどこにもいません。

けれど、
「猫は僕を呼んでいたんだ。」

そう思うと、たまらなく猫に会いたくなりました。

「風よやめ。やんでくれ…」

風がやめば、いつものように小屋が現れるに違いないと思ったのです。

何度も何度もそう願いながら、灯りを探し続けました。


しかし、びしょ濡れで冷え切った体は、もうクタクタでした。

握っていたはずの傘は、いつの間にかなくなり、
どこにいるのかさえ分からなくなっていました。


「やっぱりムリか…」


彼は肩を落とし、暗闇の中で座り込んでしまいました。

そして目をつぶり、雨を、風を、そして波と砂浜のざわつきを感じました。